歯科衛生士の採用と定着のポイント――社労士が見る「辞めない職場づくり」
- MSL社会保険労務士事務所 代表 綱島 渉
- 4月11日
- 読了時間: 3分

歯科医院の経営において、歯科衛生士の採用と定着は極めて重要なテーマです。しかし、現場では「求人を出しても応募がない」「すぐに辞めてしまう」といった声を多く聞きます。
本記事では、社労士の視点から、歯科衛生士の労務管理と定着戦略について解説します。
■ 歯科衛生士の人材市場は“売り手市場”
歯科衛生士の国家資格保有者は約28万人(2023年時点)いるとされますが、実際に就業しているのは約15万人程度。結婚や出産を機に現場を離れるケースが多く、慢性的な人手不足が続いています。
そのため、求人倍率は非常に高く、**「歯科衛生士が医院を選ぶ時代」**になっているのが現実です。
■ 採用について
採用手法には、求人広告や人材紹介会社の利用などさまざまな方法がありますが、私としては歯科衛生士専門学校への訪問を特におすすめいたします。
学校を訪れ、関係性を築くことで、求人票やインターンシップの案内などを校内に設置させていただける可能性も高まり、学生に医院の存在を認知してもらう機会が増えます。
また、ひとりでも採用に至れば、在校生や教職員の間で良い口コミが広がりやすく、継続的な採用にもつながりやすくなります。
■ 採用よりも“辞めさせない”工夫が重要
採用が難しい今、まず重要なのは既存スタッフの定着です。以下のような取り組みが、歯科衛生士の離職防止に大きく寄与します。
✅ 1. 業務範囲と指示系統を明確にする
• 歯科衛生士法に基づいた業務を徹底し、「何でもやらされる」環境を避ける
• 院長とスタッフの間に連絡・指示の整理されたルールを作る
✅ 2. 働きやすい勤務体系と休日設計
• 有給休暇を「取りやすい雰囲気」に整える
• シフト制でも、休みの希望が通りやすい仕組みが満足度を左右する
✅ 3. 給与の「見える化」と正当性
• 基本給・手当・賞与の構成を分かりやすく提示
• 同一労働・同一賃金への配慮も重要
• 「他院と比べてどうか?」がスタッフの心理に影響します
✅ 4. 定期的な面談・匿名アンケートの実施
• 辞めたい理由は、実は退職届が出る前に兆候があることが多い
• スタッフの本音を拾い上げる仕組み作りが肝心です
■ 就業規則・雇用契約書の整備も必須
歯科医院では、法的整備が後回しになっているケースもあります。トラブル予防の観点からも、以下は最低限整えておきましょう。
• 就業規則(労働条件通知の明文化、懲戒規定の整備)
• 雇用契約書(更新の有無、有期雇用者への説明など)
• 育休・産休、時短勤務制度などの制度導入
• ハラスメント対応ポリシー
■ 社労士は“人を守り、医院も守る”存在に
私たち社労士は、単に手続きを代行するだけではなく、スタッフの働きやすさと医院の経営リスク軽減の両立を支援しています。
歯科衛生士が「この職場で働き続けたい」と思える環境を作ることで、医院全体の雰囲気が良くなり、患者さんにも伝わる好循環が生まれます。
📌 まとめ:歯科衛生士の“定着”は最大のコスト削減
• 人材確保のカギは「離職率の低下」
• 就業環境とルール整備が“安心感”を生む
• 社労士の活用で、労務トラブルを未然に防ぐ
医院の現状に合わせた制度見直しや職員向けアンケート設計など、貴院オリジナルの労務改善プランをご提案できます。
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